遺言書の書き方のルールはなぜ厳しい?【代表的な理由2つを解説】

遺言

遺言書を書きたいなと思ったときに,まず真っ先にぶち当たるカベが,どうやって書けばいいのだろう?という疑問ではないでしょうか? 遺言書について詳しく知らない方でも「遺言書って法律に決められた書き方で書かないと無効になっちゃうんだよね?」くらいはご存知の方が多いのではないでしょうか?

ずばりそのとおりで,遺言書は自分のメモ帳のはしがきのように自由に書くことができません。 法律に書き方や作り方が定められていて,そのルール通りに遺言書は書かなければいけません

では,なぜそもそも遺言書はこんなに厳しく書き方が法律で管理されているのでしょうか? 今回は遺言書の書き方が厳しく決められている理由を,納得いただけるように解説いたします。

 

遺言書の基本的な役割 そもそも遺言書とは?

遺言書は,人が自分の死後にどのように財産を分けるか,誰に渡すのかを指定するための重要な文書です。 生きている私たちが,自分が持っているもの(お金など)を人に譲渡することが当然可能なのは,みなさんもご存知のとおりです。 それでは,自分が亡くなったあとに,遺していったものを人に譲渡することは可能なのでしょうか?

これを可能にしているのが遺言書です。 つまり,遺言書というものは,自分が遺していったものを遺族やお世話になった人に譲渡することを可能にする文書なのです。

 

2.もし遺言書が無かったら?

人はいつ亡くなるかわかりません。 明日交通事故で亡くなる可能性だってあるのです。 そうなると,遺言書を書いていなかった場合,遺したもの(お金や不動産)たちはどうなるのでしょうか?

答えは,民法という法律に書かれているルールに従って財産が自動的に分けられます。 例えば,配偶者や子供がいる場合,それぞれの取り分が法律で決められています。 しかし,個々の事情に応じてこれが最善でない場合もあります。 遺言書があれば,個人の意志に基づいて財産を分けることができるため,遺言書の作成が重要となるのです。

 

遺言書の書き方ルールが非常に厳しい理由

遺言書がどのような文書か理解できたところで,遺言書の書き方ルールが非常に厳しい理由を見ていきましょう。

 

理由その1:遺言書の内容について確認する手段がない

前述のとおり,遺言書とは,自分が遺したものの譲渡・分割方法を定めた文書でした。 ここに遺言書の書き方のルールが厳しく決められている理由があります。

いくつか理由があるのですが,最も大きい理由は「その遺言書に書かれていることに間違いがないか・内容の解釈は合っているかについて,本人が亡くなってしまっているので確認ができない」ためです。

日本語は非常に曖昧な表現を多用する言語と言われています。 遺言書に書かれている内容が2通りの意味に解釈できたり,「本当にこの内容で合っていますか?」と確認したい箇所があったりしても,当の本人は無くなってしまっているので確認する手段がありません。

そのため,遺言書の内容がキチンと一意に判読できるか,そもそもちゃんと本人が遺言書を書いているか,について疑義が発生しないように,一定の決められた方法に従って遺言書を作成することが義務付けられているのです。

 

理由その2:不正を防ぐため

もし仮に遺言書がメモのはしがきでもOKだとしましょう。 そうすると,遺族のAさんが自分自身でメモに「遺産はすべてAに相続させるものとする」というような遺言書をでっち上げ,亡くなった人やその他遺族の望まない相続を実現してしまう可能性があります。(そんなクソ野郎がいるのか?と思うかもしれませんが,相続や遺言は大金が絡むケースが多いのであり得る話なのです…)

こうした事態を防ぐために,遺言書の形式や内容に厳しいルールが設けられているのです。

具体的には,遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の三つの主要な種類がありますが,これのいずれかの方法で遺言書を作成することを法律的に義務付けることで,不正が入り込む余地が少なくなっています

※「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」については,別の記事で解説します。

 

3. 書き方ルール以外に遺言書を作成する際の注意点

遺言書を作成する際には,書き方ルール以外にもいくつかの重要な注意点があります。

まず,遺言書の内容が法律に反していないかどうかを確認して作成することが重要です。 たとえば,遺留分という法律のルールがありますが,この遺留分に配慮した内容で遺言書を作成しなければ,意図していたのと違った相続や遺産分割になる可能性があります。

また,遺言書を作成した後も,状況が変わった場合には内容を見直す必要があります。例えば,新たに家族(孫など)が増えた場合や,財産の状況が大きく変わったりした場合です。

さらに,遺言書を安全な場所に保管することも重要です。自筆証書遺言の場合は,家庭裁判所で検認手続きを行う必要があるため,遺言書が発見されないと意味がありません。公正証書遺言の場合は,公証役場で保管されるため比較的安全ですが,それでも家族に遺言書の存在を知らせておくことが大切です。

4. まとめ

以上の理由から,日本における遺言書のルールは非常に厳しく定められています。 書き方のルールや,遺留分,家庭裁判所の検認など・・・,ここに書き切れていない守るべきルールがたくさんあります。

しかし,ルールが複雑だから遺言書を作成するのを先延ばしにして,遺言書を用意しないまま亡くなってしまうと,遺された遺族に負担がかかる事態になることがあります。 また,遺言書がない場合,原則として法定相続分のルールにしたがって遺産が分割されることが多いため,かなり硬直的な遺産分割となり,遺族間に遺恨を残す結果につながりやすくなります

遺族が遺産分割をスムーズに,そして争わずにできるように,一定の遺産分割の方向性をぜひ遺言書というカタチで,存命中に残しておくことをおすすめいたします。 わからないことは,弁護士や司法書士や行政書士など,ぜひ専門家を頼って進めてみて下さい。

タイトルとURLをコピーしました