はじめに
相続は,人生の中で“絶対に”避けては通れない大切なプロセスの一つです。 それは以下の民法条文からもわかります。
民法 第882条【相続開始の原因】
相続は、死亡によって開始する。
相続は死亡によって(例外なく)開始されるのです。 そして死は,例外なくみんなに訪れますので,相続は私たち全員が避けては通れない超重要イベントなのです。
しかし,そんな超重要イベントなのに,難しい法律は関わってくるし,遺族の感情が入り乱れるし,場合によっては多額の金銭が絡んでくるので,思い通りに進まないことが多いです。 身の回りに僕・私「相続に明るいんだよね~」という方は,なかなか見つからないのではないでしょうか?
そこで今回は,「相続」とは?から始まり,相続によく関連してくる「遺産分割」「遺産分割協議」の基本のキについて解説していきます。
そもそも相続とは?
まず「相続」という用語について確認しましょう。 「相続」とは,亡くなった人(被相続人)の発生によって,その財産や債務を法律などの一定のルールに従って継承することです。
相続は,被相続人が亡くなった時点で自動的に開始されます。(これは先ほど民法882条で見ましたね!)
つい先ほど『「相続」とは・・・財産・・・を法律などの一定のルールに従って継承する・・・』と書きました。 法律“など”とあるように,相続には大きく分けて,法律によって相続人が承継する財産割合を決める「法定相続」と,亡くなった方の遺言書に従って承継財産割合を決める「遺言相続」があります。
法定相続とは,“亡くなった方が遺言を残さなかった場合”に,民法で決められた相続人がその規定に従って財産を分割するのです。(このときの相続人を“法”律が“定”めた相続人ということで法定相続人と言ったりします。
一方,遺言相続は,被相続人が生前に遺言書を作成し,その内容に従って相続が行われる場合を指します。
今回の記事は,相続の基礎・遺産分割協議・遺産分割協議についてのものですので,法定相続や遺言相続についての詳しい違いなどの解説は別の記事で行います。
遺産分割とは何か
次に,「遺産分割」を説明します。
遺産分割とは,亡くなった人の財産を,相続人の間で分けることを言います。
「ん? それは相続と何が違うの?」と思った方もいらっしゃると思いますので,もう少し詳しく解説します。
「相続」という言葉は,亡くなった方の財産を引き継ぐ人を特定したり,遺言書が確かなものか家庭裁判所に検認してもらったり,遺言執行人が任命されたり,誰がどの財産を承継するか決めたり,実際に相続人の銀行口座に相続したお金を入金したり…といった,死亡→財産承継完了までの一連の流れすべてを守備範囲としています。
対して「遺産分割」とは,上記の相続の一連の流れの中での,『誰がどの財産を承継するか決めたり』という部分のことです。
つまり,開始された相続という“財産継承作業の中”において,後述する遺産分割は,相続の一部の手続きであり,相続全体の中で,具体的に財産を分配する段階を指す言葉です。
たとえば,遺言書が存在していて「財産(1,000万円相当の不動産,1,000万円の現金)は50%を妻,25%を長男,25%を長女に相続させる。」と遺言されていた場合に
- 妻:不動産
- 長男:現金500万円
- 長女:現金500万円
というように,相続人たちが具体的に遺産を分割することを遺産分割と言います。
遺産分割が必要になるのは,相続人が複数いる場合です。 一人しか相続人がいない場合は,そのまま全財産を相続するため,遺産分割の手続きを取る必要はありません。 しかし,相続人が複数いる場合,それぞれの相続分を決めて財産を分配するための「遺産分割」が必要になるのです。
遺産分割協議とは
次に,「遺産分割協議」という用語に触れておきます。
遺産分割協議とは,複数の相続人が遺産をどのように分割するかを話し合うことです。
つまり,先ほどの遺産分割の内容を決定するための実際の話し合いという作業が遺産分割協議です。
遺産分割協議は,相続人全員の合意がなければ行うことができません。
家系図の解説ページなどで何度も「相続などで使う(相続人特定のための)家系図作成はプロに任せた方がいい」と表現しているのは,この遺産分割協議には相続人全員の参加が必要だからです。
相続人全員の参加と合意が無ければ,遺産分割協議は無効となります。 つまり,相続人を調査漏れしており,遺産分割協議が苦労の末まとまったのに,あとから漏れていた相続人が現れた場合,遺産分割協議は無効となり最初からやり直しです。
そのため,相続人調査や相続の際に使う家系図は,必ず専門家に依頼して作ってもらいましょう。
まとめ
相続は,感情や法律が絡み合い,複雑なプロセスとなりがちです。 しかし,必要最低限の基本的な法律知識を持っておく,事前に適切な準備をしておくことで,トラブルや争族を避け,公平な相続を実現することができます。
ここで大切なのは,「相続」は生半可な知識では適切に処理できない,ということを理解しておくことです。 もちろん,相続について全く何も知らないよりも,最低限の用語の意味や大きな流れくらいは知っておくほうが何倍もよいことです。
しかし,相続というのは,法律を勉強している士業でも,ひとつの士業で完結が難しい分野なのです。 相続内容に紛争があれば弁護士,不動産の相続があれば司法書士,相続税が絡みますので税理士・・・と,かなりの種類の士業の専門知識が必要となるのです。 行政書士としては,相続関連の一部の書面の作成や,相続人調査などでご支援が可能と考えております。
このように,各種分野の専門知識が複雑にからみ合うのが相続ですので,困ったら是非専門家に一度お問い合わせしてくださいね!
最後まで読んでくださりありがとうございました!