【一体何者?!】行政書士とは? 弁護士との違いも解説

コラム

はじめに

みなさんは「行政書士」という職業をご存知でしょうか? このページにいらしているということは,「行政書士」という単語や士業の存在はご存知かと思います。

しかし,行政書士という士業がみなさんにどのようなサービスを提供することができて,何をしている人であるか説明できる方は超レアです。(筆者は人生でひとりも出会ったことがありません)

行政書士は絶妙に取り扱うことができる範囲が広いせいで,

「法律のことなら弁護士!」

「税金のことなら税理士!」

「登記のことなら司法書士!」

のように,行政書士を一言で表現することがなかなか難しいのです。

 

そこで今回は,行政書士という職業がどのようなことをしているのか,ざっくりと解説してみようと思います。

 

行政書士の仕事を,頑張って一言で表現してみる

まず,行政書士ができる業務について,日本行政書士会連合会では,主に以下の3つを挙げています。

  • 「官公署に提出する書類」の作成とその代理、相談業務
  • 「権利義務に関する書類」の作成とその代理、相談業務
  • 「事実証明に関する書類」の作成とその代理、相談業務

う~ん・・・難しい!!笑

 

日常会話で「お仕事なにしてるんですか?」と聞かれたときに「『官公署に提出する書類』の作成とその代理~・・・」と長々と説明したら非常に退屈しそうです。

 

そこで,執筆者なりに一行で行政書士の仕事を表現してみます。

いきますよ? 行政書士の仕事は・・・

「役所に提出する書類や法律書面を,お客さんの代わりに作成する仕事」

これが行政書士の仕事です。

 

日本行政書士連合会の記載から「相談業務」が消えていますが,大体どんな仕事でもお客さまからの質問に答えたり,ヒアリングしたり,相談に乗ることはあるから省略しました。

ここから,「役所に提出する書類や法律書面を,お客さんの代わりに作成する仕事」について,もう少し詳しく分解しながら解説します。

 

行政書士は書類や書面の生産者

行政“書“士とあるように,行政書士は行政や法律が関わってくる書類を作成することが仕事なのです。

基本的にどの専門分野の行政書士の先生でも,突き詰めれば作っているのは行政書類(行政機関=役所に提出する書類)か,法律書面を作っています

つまり,書類・書面の生産者なのです。 トヨタ自動車が車を造っている,農家さんが野菜や果物を生産しているのと同じです。

 

さて,農家さんにも生産している物はバラバラですよね。 そんな中でも,トマト・キャベツ・ブロッコリー,またはイチゴ・バナナ・リンゴなど,農家さんには大きく2つに分けて野菜と作っている方,果物を作っている方とがいらっしゃいます。

 

行政書士の先生も,大きく①行政書類と②法律書面を作っている先生とに分けられます。(もちろん①②の両方専門にされている先生もいらっしゃいます)

 

整理すると,行政書士の仕事は以下のとおりです。

「役所に提出する書類(=①行政文書)や②法律書面を,お客さんの代わりに作成する仕事」

それでは,具体的に行政書士が作っている①行政文書や②法律書面を見ていきましょう。

 

行政書士が作っている書類その①:行政文書

行政文書というのは,行政機関(市役所など)に提出する書類のことです。

なんだか難しい書類に思うかもしれませんが,実はみなさんも行政文書は何度も見たことありますし,実際に書いています。

市役所に行って,住民票の写しを発行したことがあるのではないでしょうか? または引越しをしたときに転入や転出の届出をしたことがあるのではないでしょうか?

住民票等交付申請書

これらのときに,市役所においてある「住民票等交付申請書」「住民異動届出書」を書いたことのある人も多いと思います。

これらも実は立派な行政文書です。 なぜなら,ちゃんと行政機関(市役所など)に提出をしているからです。

 

行政文書のイメージが持てたでしょうか? 私たち行政書士はお客さんの代わりに,このような行政文書を作成しているのです。

 

「え? 住民票の申請書くらい自分でも書けるよね?」と思ったと思います。 まさにその通りで,住民票申請書を代わりに書く仕事を受任することはまずありません。

 

行政文書の中には,その作成に専門知識が必要なものがあります。

たとえば,国際法務関連ですと入国管理局に提出する「在留資格変更許可申請に添付する在留資格変更許可理由書」を作るのには入管法や在留資格制度への高度な知識が必要です。

また,そもそもどのような行政文書を用意すればよいかの一般の方には判断が難しいこともあります。 たとえば,告示外の定住者資格を得るために用意しなければいけない行政文書がわかる方はほぼいません。

他にも,マイホームを建てるとき,開発許可のために設計図や構造計算書を役所に提出しなければなりませんが,これを自分で作成できる方はほぼ存在しないと思います。

 

このように,行政文書には誰でも作れるものから,専門知識がなければ作成が難しいものまで,たくさんあるのです。 作成が難しい書類の中には,情報を整理したりするのに数か月~1年以上の時間が必要となるものも存在します。

そのような自身で作成することが困難な行政文書を,お客さんの代わりに作成することを行政文書は仕事としているのです。

 

行政書士が作っている書類その②:法律書面

法律書面とは,法律関係を証明する書面のことと考えてください。

たとえば契約書や借用書などです。

これらはあくまでも個人間のやり取りの証明書類なので,行政機関に提出することはなく,行政文書ではありませんが,行政書士は本人の代わりに作成することができます。

 

法律書面はいくらでもあります。

遺言書,契約書,賃貸借契約書,借用書,離婚協議書,約款,法人の定款,遺産分割協議書,家系図(親族関係を証明する文書です)…いくらでも挙げることが可能です。

そのため,行政書士が取り扱える文書は①②併せて1万種を超えるのではないかと言われています。

 

行政書士に頼るべき場面

ここまでの話を整理しましょう。

  • 行政書士の仕事:役所に提出する書類や法律書面を,お客さんの代わりに作成する仕事
  • 行政書士が取り扱える文書:行政文書と法律書面

これを踏まえると,行政書士を頼るべき場面がわかります。

「自分で作成することが困難な行政文書や法律書面が必要なとき」

が,行政書士を頼るべき場面です。

 

弁護士との違いは?

法律のことと言えば,やはり皆さんがイメージするのは弁護士だと思います。 行政書士との知名度も段違いです。

そのあたりを歩いている人に「知っている士業を挙げてください」と言って出てくるのは弁護士か税理士くらいではないでしょうか?

税理士は税金関係のことをやっている,とわかると思います。

では弁護士と行政書士とは何が違うのでしょうか?

 

たくさんあるのですが,ここでは大きく2つの違いに触れておきます。

  • ①:紛争を取り扱えるのは弁護士だけ
  • ②:代理人になって交渉できるのは弁護士だけ

 

①:紛争を取り扱えるのは弁護士だけ

弁護士をイメージすると,裁判所で戦っている姿を思い浮かべるのではないでしょうか? 弁護士は裁判を行う人の代わりに訴訟に代理参加できる唯一の資格です。(ごく一部,司法書士や弁理士に例外がありますがここでは触れません)

裁判所に弁護士が出廷しているということは,何かしらのトラブル(紛争)が存在して,それを解決しなければならないという状況にあることを意味します。

そして,紛争を法律で上手く解決できるかどうかは,裁判に参加している人からしたら人生に大きな影響が出ます。 そのため,紛争に発展している案件は,司法試験に合格している弁護士のみが扱えることになっているのです。

なので,行政書士は紛争性のある事案の行政文書や法律書面は取り扱うことができません

 

紛争性のある事案とない事案の例を,離婚協議書を事例として紹介します。

・紛争性のある事案

離婚協議書を作りたいが,離婚するしないで揉めている,親権で揉めている,養育費の話し合いが平行線である。 このような事案は紛争性があるので,弁護士の先生に頼りましょう。

・紛争性のない事案

離婚,親権,養育費内容についての合意が成立しており,これらを離婚協議書として書面に残したい。 このような場合は,紛争性がなく,お互いの合意の内容を書面というカタチに残す性質が非常に強く,“その書面を作る”ということで当事者の人生が大きく変わるということもほぼあり得ません。

そのため,行政書士でも対応が可能です。

 

②:代理人になって交渉できるのは弁護士だけ

日本では,法律行為(契約や合意)について,お金を貰って(商売として)代理人になって,代わりに交渉を行うことは,原則として弁護士のみに認められています。 そのため,行政書士は書面作成を受任しても交渉を行うことはできません

たとえば,離婚協議書の作成について夫さんから依頼を受けた弁護士の場合,妻と養育費の内容や親権について夫の代わりに交渉することができます。 そして交渉した結果を離婚協議書にまとめるなどができるのです。

対して行政書士は代理人になれず,交渉もできませんので,離婚協議書の作成を受任しても「夫さんの●●の状況を勘案し,〇万円/月の養育費でいかがでしょうか?」という提案や話し合いは絶対にNGということになります。

 

弁護士の先生と行政書士との住み分け

弁護士の先生は,行政書士が取り扱える事案は基本的に取り扱えますし,代理人になることもできますので守備範囲が行政書士より広いです

それでは行政書士は必要ないのか,頼むタイミングは無いのか?というと,それは少し違うと筆者は考えています。

 

弁護士の先生は,主にその守備範囲を紛争事件の解決としています。 対して,行政書士は弁護士の先生などが扱わない事案でお客さまをサポートできるように専門知識をつけています

たとえば,ビルなどを建てるときの建築確認申請では基本的にトラブルはあまりありません。 そのため,取り扱う弁護士の先生も少ないので,行政書士で建築確認申請関係の専門知識を身に着け,お客さまをご支援している先生が多い状況となっています。

この世に行政書士という資格がない場合,誰かがこのような弁護士の守備範囲であるが,あまり担当している方がいないとなると,消費者の方は専門知識を持つ先生を探すことが困難になります。

行政書士でありながら弁護士の先生しかできないことまでやる人は言語道断ですが,キチンと各資格に割り当てられている役割の中で,消費者の方に適切にサービスを提供することができれば,行政書士という資格がお客様の役に立つことに繋がります。

 

さいごに

行政書士の先生方の間でも,知人から「行政書士ってなに?」と聞かれるのも,聞かれたときにパッと一言で答えられず,知人の疑問を晴らすことができなかった…というのは,実はあるあるなのです笑

今回は,行政書士が,一体何ができる人なのか,法律の難しい用語に踏み込まずに解説させて頂きました。

さいごにもう一度整理しておきます。

  • 行政書士の仕事役所に提出する書類や法律書面を,お客さんの代わりに作成する仕事
  • 行政書士が取り扱える文書紛争性のない行政文書と法律書面

 

最後まで読んでくださりありがとうございました!

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